中小企業経営者が知っておきたい事業承継と相続の違い|混同しやすい2つの制度を整理

中小企業経営者が知っておきたい事業承継と相続の違い|混同しやすい2つの制度を整理

2025年12月15日

中小企業経営者が知っておきたい「事業承継」と「相続」の違い― 混同しやすい2つの制度を整理する ―

中小企業の経営者の方から、相続の相談を受けていると、よく次のような言葉を耳にします。

「会社は長男に継がせるつもりです」
「相続の話は、事業承継の中でまとめて考えています」

しかし実務では、「事業承継」と「相続」は似ているようで、まったく別の仕組みです。

この違いを整理しないまま進めてしまうと、思わぬ税負担が生じる、家族間で不公平感が生まれる。会社経営が不安定になるなどといった問題につながることもあります。この記事では、中小企業経営者の方向けに、事業承継と相続の違いを分かりやすく整理します。


そもそも「相続」とは何か

相続とは、亡くなった方の財産や権利義務を、法律に基づいて引き継ぐことです。対象になるのは、
・預貯金
・不動産
・株式
・会社の持分
・借入金
など、個人が持っていたすべての財産です。

相続は、民法のルールや遺言書がある場合はその内容に従って進められます。


「事業承継」とは何を指すのか

一方、事業承継とは、

会社や事業を、次の経営者へ引き継ぐこと

を指します。ここで重要なのは、事業承継は「経営のバトンタッチ」であり、誰が社長になるか、誰が株式を持つか、誰が経営判断を行うかといった経営の問題が中心になる点です。


よくある誤解:「会社を継がせる=相続も解決」

実務で多いのが、「会社は後継者に任せるから、相続もそれで問題ない」という考え方です。しかし実際には、会社の株式も相続財産、不動産や預貯金も相続財産であり、他の相続人の権利も当然に発生します。
後継者だけに会社を集中させる場合、他の相続人への配慮や財産の分け方、納得感のある説明を用意しておかないと、後になってトラブルに発展することも少なくありません。


事業承継と相続の主な違い

項目 相続 事業承継
目的 財産の引き継ぎ 経営の引き継ぎ
ルール 民法・遺言 会社法・経営判断
対象 すべての財産 会社・株式・経営権
関係者 相続人全員 後継者・関係者
時期 死亡時 生前から準備

このように、考える軸が異なるのが特徴です。


なぜ中小企業ほど両方を整理する必要があるのか

中小企業では、会社の株式や経営者個人の財産、自宅や事業用不動産が密接に結びついているケースが多く見られます。そのため、相続の設計や事業承継の設計を別々に考えると、どちらかに無理が出てしまう場合があります。


行政書士が関わる場面

相続と事業承継の分野では、複数の専門職が関与します。

行政書士は主に、
・遺言書の作成支援
・遺産分割協議書の作成
・相続関係説明図の整備
・各種名義変更の書類作成など、制度と実務をつなぐ書類面の整理を担います。
事業承継そのものの設計や税務については、司法書士や税理士など他の専門職と連携することも一般的です。


まとめ

相続は「財産の引き継ぎ」、事業承継は「経営の引き継ぎ」似ているようで、目的もルールも異なります。中小企業の経営者にとっては、

会社の将来
家族の将来

の両方を守るために、相続と事業承継をセットで考えることが重要になります。早めに整理しておくことで、不要な対立を避け会社の安定・家族の安心を同時に守ることができるのではないでしょうか。

よくある質問

法定後見と任意後見はどう違いますか?

法定後見は判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選任する制度です。任意後見は判断能力があるうちに自分で後見人(信頼できる人)を決めておく制度で、本人の意思が反映されやすい特徴があります。

成年後見人になれるのはどんな人ですか?

家族・友人・専門家(弁護士・司法書士・行政書士・社会福祉士など)がなれます。法定後見では家庭裁判所が適任者を選びます。任意後見は本人が事前に指定します。

成年後見制度を使うと相続対策(節税)に制限がありますか?

あります。成年後見人は本人の利益保護が優先のため、節税目的の生前贈与・不動産売却などは原則できません。そのため認知症対策は判断能力があるうちに行うことが重要です。

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この記事を書いた人

特定行政書士 入江 紀子

栃木県・宇都宮市に拠点を置く相続・遺言・終活専門の行政書士事務所。難しい法律を分かりやすく伝えることを大切に、地域の方々の「想い」を形にするお手伝いをしています。