相続というと、不動産の分け方に注目が集まりがちです。しかし実務の現場では、「預貯金や証券などの金融資産」が原因でトラブルになるというケースが少なくありません。
この記事では、相続相談で見落とされやすい金融資産の分配リスクについて、よくあるトラブル例・原因・対策を整理してお伝えします。
金融資産は「分けやすい」からこそ揉めやすい

預貯金や証券は、次の特徴があります。
- 金額がはっきりしている
- 換金しやすい
- 誰でも使える
その一方で、「公平に分けるべき」「自分も同じ額をもらう権利がある」という意識が強く働きやすく、感情的な対立が生まれやすい財産でもあります。
よくある金融資産トラブルの例

ケース1|同居していた相続人が生前に引き出していた
介護などで同居していたご家族が、被相続人の口座から生活費や医療費として引き出していた場合、他の相続人から「使い込みでは」と疑念を持たれるケースがあります。日々の記録や領収書が残っていないと、説明が難しくなることがあります。
ケース2|把握していなかった口座が後から見つかった
一部の相続人だけが知っていた口座が、遺産分割協議の後に発覚すると、協議のやり直しが必要になる場合があります。「隠していたのでは」という不信感にもつながります。見落としを避けるためには、取引のあった金融機関を網羅的に確認することが大切です。
ケース3|証券口座の評価額で揉める
株式や投資信託は日々価格が変動するため、「いつの時点の評価額で分けるか」で意見が分かれることがあります。相続開始時・遺産分割時・名義変更時など、基準をあらかじめ決めておくことが重要です。
ケース4|使い道が不明確なまま話が進む
金融資産は、使い道の証明が難しい場合もあります。説明ができない状態だと、不公平感や不信感が積み重なりやすい面があります。
なぜ金融資産は特にトラブルになりやすいのか

理由は大きく3つあります。
- 数字で比較しやすい:差が一目で分かる
- すぐ現金化しやすい:使ったかどうかが追跡しにくい
- 管理状況が本人以外に見えにくい:通帳記帳・取引履歴は当事者しか把握しづらい
不動産のように「分けにくい」財産よりも、目に見える形で差が出やすいことが原因です。
リスクを下げるための現実的な対策

① 口座一覧を残しておく
銀行名・支店名・口座の種類だけでも整理しておくと、後の調査負担が大きく減ります。エンディングノートに記載しておく方法もあります。
② 使途をメモしておく
生前に大きなお金を動かす場合は、「何のために・いつ・どれくらい」を簡単に記録しておくことで、誤解を防ぎやすくなります。介護費用・医療費の領収書も保管しておきましょう。
③ 遺言書で分配方法を明確にする
金融資産こそ、「誰に、いくら(または何割)」をはっきりさせておくことが有効です。遺言書があれば金融機関での手続きが大幅にシンプルになり、相続人全員の署名が不要になるケースが多くあります。
④ 被相続人の生前から、口座情報を家族で共有する
「重要な取引履歴・記録は分かりやすい場所に保管する」「主要な金融機関は家族にも伝えておく」など、生前のひと工夫が後の調査をスムーズにします。
口座凍結後の解除と手続きの流れ
金融機関が名義人の死亡を知ると、口座は凍結されます。預金を下ろすには、以下のような書類を金融機関に提出する必要があります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(または法定相続情報一覧図)
- 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 金融機関所定の払戻請求書(相続人全員の署名・実印)
金融機関によって必要書類が異なる場合もあるため、事前に窓口で確認しておくのがおすすめです。
2019年導入「預貯金の仮払い制度」
葬儀費用や生活費などすぐにお金が必要なときには、「預貯金の仮払い制度」を利用できます。各相続人が遺産分割協議の前でも、預貯金の一部(口座ごとに上限あり)を引き出すことが可能です。
行政書士がサポートできること
金融資産の整理から相続手続きまで、行政書士は次のようなサポートが可能です。
まとめ

金融資産は、「分けやすい」「見えにくい」「感情が絡みやすい」という特徴から、相続トラブルの原因になりやすい財産です。
意識したいポイント:
- 口座の整理・記録を残す
- 大きなお金の動きには使途メモをつける
- 遺言書で意思を示しておく
- 相続発生後は口座凍結→必要書類の準備→仮払い制度も検討
こうした小さな準備が、家族の不信感や対立を防ぐことにつながります。「自分の家の場合はどこから手をつければいいか」と迷われた段階でも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
2024年4月から相続登記が義務化されたのはなぜですか?
所有者不明土地の増加が社会問題となったためです。相続しても登記しない「相続未登記不動産」が全国で増え続け、公共事業・土地利用の妨げになっていました。
相続登記の期限を守らないとどうなりますか?
相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料(行政上の罰則)が科される可能性があります。正当な理由がある場合は猶予される場合もありますが、早めの対応をおすすめします。
相続登記はどこに依頼すればよいですか?
司法書士が専門家です。登記申請書の作成・法務局への申請をサポートしてもらえます。Kanade行政書士事務所でも戸籍収集・遺産分割協議書作成まで担当し、司法書士と連携して最後まで対応します。

