せっかく遺言書を作成しても、その文言の曖昧さや誤りが原因で、家族が混乱してしまうことがあります。
近年、「遺言書はあるのに、手続きがスムーズに進まない」というご相談が増えています。
この記事では、実際にあった事例をもとに、どのような記載ミスがトラブルを招くのか、そしてそれを防ぐためのポイントを分かりやすく解説します。
遺言書の文言で起こりがちなミス
遺言書の文言に曖昧さがあると、相続人の間で解釈が分かれてトラブルの原因になります。よくあるミスを整理します。
① 不動産の特定が曖昧
「自宅を長男に相続させる」だけでは、複数の不動産がある場合に特定できません。所在地・地番・家屋番号を正確に記載する必要があります。
② 預金の特定が不十分
「預金を次男に」ではなく、「○○銀行△△支店 普通預金 口座番号××× の預金を次男に」と具体的に記載します。
③ 人物の特定が曖昧
「孫に」だけでは、どの孫を指すか分かりません。氏名・生年月日・続柄で特定します。
④ 「遺贈」と「相続」の混同
相続人に対しては「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」が正しい表現です。用語を間違えると税務上の扱いが変わることがあります。
⑤ 全財産の記載漏れ
特定の財産のみ記載して他を書き忘れると、記載されなかった財産は通常の遺産分割協議が必要になります。「その他一切の財産」という包括条項を入れておくと安心です。

事例紹介:文言の曖昧さで手続きが滞ったケース

Aさん(故人)は、「私の財産のうち自宅を長男に相続させる」と遺言書に記していました。
ところが、他の相続人は「“財産のうち”とは何を指すのか」「預貯金も含まれるのではないか」と解釈が分かれました。
遺言書の記載内容が不明確だったため、手続きを進めるにあたり関係者間で認識が一致せず、結果的に相続が長期化してしまったのです。
主な原因
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「財産のうち」といった抽象的な表現で、対象財産が特定されていなかった
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「自宅」としか書かれておらず、土地・建物の所在や地番などが不明確だった
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「相続させる」と「遺贈する」の使い分けがされていなかった
このようなケースでは、遺言書自体は有効でも、手続き実務が進まないという状況が起きてしまいます。
よくある文言ミスと注意すべきポイント

① 財産の特定があいまい
「自宅」「預金」「株式」などの表現だけでは、どの不動産や口座を指しているのかが不明確です。
登記簿や通帳の情報をもとに、正確な名称・所在地・口座番号を記載することが望ましいでしょう。
② 用語の混同
「相続させる」と「遺贈する」は似ていますが、相続人かどうかによって使い分けが必要です。
この区別を誤ると、登記や名義変更時に追加の確認が求められることがあります。
③ 訂正や加筆の方式不備
遺言書の訂正や追記には、民法上の方式(訂正印や署名など)が求められます。
誤った修正を行うと、その部分の内容が無効とされることがあります。
防止のための工夫と見直しのすすめ

遺言書を作る際には、法的要件を満たすことはもちろん、読む人にとって分かりやすい構成にすることが大切です。
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財産を明確に特定し、表現のあいまいさを避ける
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定期的に内容を見直し、現状に合わせて更新する
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家族構成や財産状況の変化に応じて、条項を整理する
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専門家に文面を確認してもらい、誤解が生じないかをチェックする
また、近年では公正証書遺言を選択することで、文言ミスや形式不備を防ぎやすくなっています。形式の整った遺言書は、残された家族にとっても安心です。
弊所でも基本的には文言や法的要件の明確性を確保するため、公正証書遺言を推奨しています。
誤解を招かないための実務上の工夫
遺言書の表現を明確にするため、次のような工夫が有効です。
- 登記事項証明書・通帳のコピーを参考に:正確な表記を転記する
- 「全部」「一切」などの包括表現を活用:漏れを防ぐ
- 配分割合を明記:「2分の1」「均等に」など解釈の余地がない表現で
- 条件付き記載は避けるか慎重に:「孫が大学に進学したら」などは解釈争いの元
- 予備的条項を入れる:受遺者が先に亡くなった場合の代替指定
公正証書遺言なら文言リスクを大幅に下げられる
公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、文言ミスによる無効や誤解のリスクがほぼありません。公証人は法的な知識に基づき、曖昧な表現を具体的な文言に整えてくれます。
自筆証書遺言を選ぶ場合でも、法務局の保管制度を利用するか、専門家に下書きのチェックを受けることで、リスクを大幅に減らせます。Kanade行政書士事務所では、遺言書の文案作成・文言チェックのご相談をお受けしています。「自分で書いたけれど、これで大丈夫か心配」という段階でもお気軽にご相談ください。
まとめ:遺言書は“意思”を伝えるための設計図

遺言書の目的は、財産を分けることよりも、「自分の想いを確実に伝え、家族に安心を残すこと」です。
そのためには、内容の正確さ・表現の明確さ・方式の適正が欠かせません。
文言の一つひとつを丁寧に確認し、将来の誤解を防ぐ内容を心がけましょう。
よくある質問
遺言書があればトラブルは必ず防げますか?
大幅に減らせますが、完全に防げるとは限りません。遺言書に不備がある場合・遺留分を侵害している場合・内容が不明確な場合などはトラブルの原因になります。専門家と作成することが重要です。
遺言書の内容に不満な相続人がいる場合はどうなりますか?
有効な遺言書であれば基本的にその内容で手続きが進みます。遺留分を侵害されている場合は遺留分侵害額請求ができます。内容を不満に思っても、形式に問題がなければ遺言書を無視することはできません。
遺言書なしで相続人が争った場合の解決策は?
相続人全員の協議(遺産分割協議)で合意を目指します。合意できない場合は家庭裁判所の遺産分割調停・審判へと進みます。早めに専門家に相談し、感情的な対立を防ぐことが重要です。

