遺言書というと「誰に何を残すか」という財産の分け方だけをイメージする方が多いかもしれません。しかし遺言書には、財産のことだけでなく、家族への想いや感謝の気持ち、遺言の理由などを自由に書き添えることができます。これを「付言事項(ふげんじこう)」といいます。この記事では、付言事項の意味・書き方のポイント・具体的な例文をわかりやすく解説します。遺言書作成を検討中の方はぜひ参考にしてください。
付言事項とは何か

付言事項とは、遺言書の中で、法律で定められた事項(財産の分け方・認知・後見人の指定など)以外の内容を書き記した部分のことです。
法的な効力はありませんが、遺言書の中に付言事項を書くことで、次のような大切な役割を果たします。
- 遺言の理由を伝える:なぜこのような財産の分け方をしたのかを説明することで、相続人の不満や疑問を和らげることができます。特に「特定の相続人に多く残した」場合などには、理由を説明することが紛争防止に繋がります。
- 家族への感謝を伝える:言葉にしなかった感謝や愛情を、書面で伝える最後の機会になります。
- 遺族の心の安定に寄与する:故人の意思がわかることで、相続人同士の対立を防ぐ効果が期待できます。
付言事項は義務ではありませんが、書いておくことで遺言書全体がより人間的で温かいものになります。行政書士として多くの遺言書作成に関わる中で、付言事項があることで遺族が「故人の想いが伝わった」と感じるケースを数多く見てきました。
付言事項に書いてよい内容

付言事項に書く内容に制限はありません。ただし、法的効力がないことを念頭に置き、財産に関する指示(「○○に△△を渡してほしい」など)は必ず法定の遺言事項として別に記載するようにしましょう。付言事項として書いただけでは法的な効力は生まれません。
一般的によく書かれる内容は次のとおりです。
- 配偶者・子ども・家族への感謝の言葉
- 特定の相続人に多く遺した・少なくした理由の説明
- 「仲良く過ごしてほしい」「支え合ってほしい」などの家族への願い
- 葬儀・お墓に関する希望(法的効力はないが参考にしてもらえる)
- 長年お世話になった人への感謝
- 自分の人生を振り返ったメッセージ
- ペットのことをお願いしたい場合の希望
付言事項の書き方のポイント

付言事項をより効果的に伝えるために、次のポイントを意識してみてください。
- 具体的に書く:「ありがとう」だけでなく、「○○の病気のときに毎日介護してくれたこと、本当に感謝している」など具体的なエピソードを交えると伝わりやすくなります。
- 全員に言葉を向ける:特定の相続人だけでなく、全員に一言ずつ言葉を添えると、読んだ全員が温かい気持ちになります。
- シンプルにまとめる:長すぎると読みにくくなります。伝えたいことを絞って、読みやすい文章にしましょう。
- 感情的にならない:不満や恨みを書くと、かえって家族の間に波風を立てることになります。前向きな内容にまとめましょう。
- 早めに書く:「いつか書こう」と思ってもなかなか書けないのが付言事項です。元気なうちに、まず書いてみることをおすすめします。行政書士がサポートしますので、一人で悩まなくて大丈夫です。
付言事項の例文

例文①:配偶者と子への感謝
妻の○○へ。長い間、支えてくれてありがとう。あなたがいなければ、今の自分はなかったと思います。どうか健康に気をつけて、ゆっくり過ごしてください。
長男の○○、長女の○○へ。二人が元気に育ってくれたこと、父としての最大の喜びです。これからも兄妹仲良く、お互いを支え合って過ごしてください。
例文②:財産配分の理由を説明する場合
長男に自宅を相続させることとしましたが、これは長男が長年介護を担ってくれたことへの感謝の気持ちからです。長女にも心から感謝しており、不公平に感じさせてしまうことを申し訳なく思っています。兄妹二人が仲良くいてくれることが、私の一番の願いです。
例文③:葬儀・墓についての希望
葬儀は家族だけで静かに送ってください。派手なことは望みません。お墓については、家族の負担にならない方法で決めてもらえれば、それで構いません。残された時間を、自分たちのために使ってほしいと思います。
例文④:おひとりさまの方が専門家への依頼を書き添える場合
私には子がなく、今回Kanade行政書士事務所に相談してこの遺言書を作成しました。死後の手続き(死後事務委任)についても同事務所にお願いしています。関係者の皆さまにはご協力をお願いします。
付言事項と遺言書全体のバランス
付言事項は遺言書の末尾に書くことが一般的です。本文(財産の分け方など法定の遺言事項)を先に書き、最後に付言事項を「付言」または「付記」として添えます。
自筆証書遺言の場合、全文を自筆で書く必要があります(財産目録を除く)。公正証書遺言の場合は、公証人が文章を整理するお手伝いをしてくれます。行政書士は自筆証書遺言・公正証書遺言どちらの作成もサポートできます。
Kanade行政書士事務所では、遺言書の作成サポートを行っています。付言事項の内容についても一緒に考えますので、「何を書けばいいかわからない」「うまく言葉にできない」という方もお気軽にご相談ください(初回60分無料)。宇都宮市・栃木県のご依頼者様はもちろん、オンラインでのご相談にも対応しています。
付言事項を書いた遺言書が遺族に与える影響

付言事項のある遺言書と、財産の指定だけが書かれた遺言書では、遺族が受け取ったときの印象が大きく異なります。法律的な部分だけが書かれた遺言書は「業務的」に感じられることもある一方、付言事項によって故人の声が聞こえてくるような遺言書は、遺族の心に深く残ります。
相続発生後は、遺族が悲しみの中で複雑な手続きをこなさなければならない時期でもあります。そのような時に、故人からの温かいメッセージがあることで、前に進む力になることも少なくありません。付言事項は、法的効力がないからこそ、人間としての言葉を自由に綴ることができます。大切な家族のために、ぜひ一言書き添えてみてください。

