相続手続きでは「相続人の所在がわからない」「連絡が取れない」というケースが珍しくありません。手続きが止まってしまう前に、どのような選択肢があるのかを知っておくことが大切です。
この記事では、宇都宮・栃木県内の実務をもとに、相続人が見つからないときの基本的な確認ステップ・利用できる法律上の仕組み・手続きが止まる典型的な理由を、わかりやすく整理します。
所在不明で問題になる典型ケース
相続人の所在が分からないと、遺産分割協議を進められません。よくあるケースは次のとおりです。
- 長年疎遠で連絡先が分からない:兄弟姉妹・甥姪との交流が途絶えている
- 海外在住で連絡がつかない:移住・長期赴任
- 行方不明になっている:連絡がつかなくなってから長期間
- 前婚時の子で交流がない:被相続人と疎遠だった子
これらのケースで放置すると、遺産分割協議が永遠に進まず、不動産の名義変更もできない事態になります。
STEP 1|まずは基本的な確認から

相続人が所在不明の場合、すぐに特別な手続きをとる前に、次のような基本的な確認を行います。
① 戸籍の調査(出生から死亡まで)
相続人の有無・続柄を確定するため、まずは戸籍の収集が基本となります。本籍地の変更・婚姻・離婚・転籍・養子縁組などを経て、戸籍が複数の自治体に分かれていることもあります。
② 住所変更の有無
- 最新の本籍
- 直近の住民票の移動履歴
- 戸籍附票
これらから、同一人物の可能性を確認します。戸籍附票には住所の履歴が記載されているため、所在追跡の手がかりになります。
③ 親族からの情報
「連絡がとれないだけで、実は別の地域で生活している」というケースも少なくありません。あくまで関係者が把握している範囲の情報を整理し、過度に踏み込みすぎないことが実務上のポイントです。
STEP 2|確認しても見つからない場合に使える法律上の仕組み

相続人の所在がわからない状態が続く場合、民法上、次のような選択肢が用意されています。介入して強制的に捜索するわけではなく、「手続きを前に進めるための仕組み」として存在する制度です。
① 不在者財産管理人の選任(家庭裁判所)
相続人がどこにいるのかわからず、財産の管理や相続手続きが進められない場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てできます。
制度の目的:不在者本人の財産が放置されて損害が出るのを防ぐこと
主な役割
- 不在者の財産の保存・管理
- 相続手続きのための協議参加(裁判所の許可の範囲内)
ポイント:不在者財産管理人は「不在者の権利を守る人」であり、他の相続人の代理として遺産分割を進めるものではありません。そのため、遺産分割協議に参加する際は裁判所の許可(次項)が必要になります。
② 不在者財産管理人の「権限外行為許可」申立て

遺産分割協議を成立させるためには、不在者財産管理人に「協議への参加」などの権限が必要です。その際に利用するのが権限外行為許可申立てです。
許可される例
- 遺産分割協議へ参加
- 預貯金の解約
- 必要な書類への署名 など
裁判所が個別の事情を見て、必要性を判断します。
③ 失踪宣告(7年失踪または特別失踪)
長期間まったく所在がわからない場合には、失踪宣告により、法律上「死亡したものとみなす」制度があります。
- 普通失踪:7年以上音信不通
- 特別失踪:天災・事故・戦争、船舶の沈没など、生死不明となる事由から1年経過
要件は厳格で、相続直近のケースですぐに利用できるものではありません。失踪宣告が認められると、その方の相続人が遺産分割協議に参加することになります。
📌 不在者財産管理人選任・失踪宣告などの家庭裁判所への申立ては弁護士・司法書士の業務範囲となります。当事務所では、所在調査と状況整理を担当し、申立てが必要な段階では連携先の専門家をご紹介します。
STEP 3|実務でよくある「手続きが止まる理由」

相続人が見つからないケースで、実務上、手続きが止まる代表的な理由をまとめました。
1人でも連絡が取れない相続人がいると、手続きは「全員で止まる」
相続手続きは全相続人の同意が原則です。一人でも欠けると、遺産分割協議を成立させられません。
無断で手続きを進めることはできない
相続手続きは、意向の確認が必須です。一人の意思を飛ばして進める制度はありません(不在者財産管理人など、適正な手続きを経る必要があります)。
早めに「情報整理」しておくと手続きがスムーズ
住所・連絡先・家族構成など、把握できる範囲で整理しておくと、いざ手続きが必要になったときに安心です。エンディングノートにこうした情報をまとめておく方法もあります。
所在不明で困らないために|事前にできる備え
将来、所在不明の相続人問題が起きそうな状況なら、次のような事前対策が有効です。
- 遺言書の作成:遺言書があれば、遺産分割協議が不要になるケースが多い
- 家族の連絡先リスト作成:被相続人が元気なうちに、親族の連絡先を整理しておく
- 遺言執行者の指定:遺言の実現を担当する人を決めておく
- 家族信託の活用:複雑な承継を柔軟に設計できる
まとめ|慌てず、選択肢を知ることが大切

相続人が見つからないケースでは不安を強く抱える方も多いですが、法律には「手続きが前に進むための仕組み」が整えられています。
意識したい3つのポイント:
- 状況を整理する(戸籍・住民票・戸籍附票で所在を追う)
- 必要な手続きの選択肢を知る(不在者財産管理人/権限外行為許可/失踪宣告)
- 早めに専門家に相談する(行政書士+弁護士・司法書士の連携)
Kanade行政書士事務所でも、戸籍収集や所在調査・状況整理の段階からサポートし、家庭裁判所手続きが必要な場合は提携の専門家をご紹介します。
よくある質問
相続人が全員いない・全員放棄した場合の財産の行方は?
相続財産管理人(相続財産清算人)が選任されます。債権者への弁済・特別縁故者への財産分与が行われたあと、残余財産は国庫に帰属します。
相続人を探しても見つからない場合、手続きはどう進めますか?
行政書士が戸籍の附票請求などによる所在調査をおこない、家庭裁判所への不在者財産管理人選任申立てや失踪宣告の申立てが必要な場合は弁護士・司法書士にご相談ください。
相続財産管理人(相続財産清算人)の申立てはどこに行いますか?
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立費用として予納金(数十万円)が必要になる場合があります。

