相続手続きを始めるにあたって、「亡くなった方にどんな財産があるのか」をしっかりと把握することが欠かせません。財産の全容をつかめないまま話し合いを進めると、後から借金が発覚したり、相続放棄の期限を逃してしまうリスクがあります。この記事では、財産調査の進め方・見落としやすいポイント・次のステップまでをわかりやすく解説します。
財産調査はなぜ相続の第一歩なのか

相続では、プラスの財産(預貯金・不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借入金・未払い税金など)も引き継ぎます。どちらかの全体像がわからないまま手続きを進めると、後から思わぬトラブルが起きることがあります。
財産の全容を把握しないと協議が始められない
遺産分割協議では「どの財産を誰が取得するか」を決める必要があります。財産の全体像が不明なまま協議を始めると、後から新たな財産・負債が判明するたびに協議をやり直すことになります。財産調査は遺産分割協議の前に必ず行うべき重要なステップです。
調査が遅れると手続き全体が後ろ倒しになる
相続放棄の申述期限は相続の開始を知った日から3ヶ月以内です(民法915条)。この期間内に財産調査を終えて、放棄するかどうかの判断をする必要があります。調査が長引く場合は、家庭裁判所に期間延長の申請をすることができます。また2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請が必要です。早めに財産の全体像を把握することが大切です。
財産の種類別:調査の進め方

財産調査は「遺品・書類の整理」から始め、種類ごとに順を追って進めます。
預貯金・証券口座の調べ方
通帳・キャッシュカード・金融機関からの郵便物を手がかりに、取引のある金融機関を特定します。通帳が見つかった金融機関に残高照会を行います(被相続人の戸籍謄本・相続関係説明図・相続人の身分証明書が必要)。ネット銀行や証券口座は通帳がないため、スマートフォンのアプリ・メール履歴・確定申告書の配当記録などから確認します。
不動産の調べ方(固定資産税通知書・登記簿)
被相続人が受け取っていた固定資産税の納税通知書が最も確実な手がかりです。市区町村役場で「名寄帳(なよりちょう)」を取得すると、その市区町村内に被相続人が保有していた不動産を一覧で確認できます。複数の都道府県に不動産がある場合は、各市区町村に個別に請求するか、法務局の登記情報提供サービスを活用します。
生命保険・退職金・その他の財産
生命保険は保険証券を探し、見当たらない場合は各保険会社のコールセンターに照会します。死亡保険金は受取人が指定されていれば相続財産ではなく受取人固有の財産ですが、受取人が「法定相続人」と指定されている場合は注意が必要です。退職金・未払い給与は勤務先へ確認します。その他、農地・山林・自動車・骨董品・有価証券なども確認対象です。
見落としやすい財産と盲点

財産調査は「もれなく」行うことが特に重要です。見落としやすいケースをあらかじめ把握しておきましょう。
タンス預金・名義の違う口座
通帳や口座と違い記録が残らないタンス預金・金庫の現金は、遺品整理の際に丁寧に確認することが大切です。また配偶者名義の口座でも、実態として被相続人の収入から積み立てていた場合は後にトラブルになることがあります。金融機関の取引履歴の確認が有効です。長年使っていなかった地方銀行の口座が残っているケースもあります。古い通帳や郵便物を遡って確認しましょう。
デジタル資産(仮想通貨・ポイント・サブスク)
近年増えているのがデジタル資産の見落としです。仮想通貨(暗号資産)はスマートフォンやパソコンのアプリから確認できますが、パスワードがわからないと把握自体が困難なこともあります。高額のポイント(財産的価値を持つ場合あり)・電子マネー・有料サブスクリプションのアカウントなども確認対象となります。
マイナスの財産(借金・保証債務)の確認も忘れずに
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借入金・連帯保証債務・未払い税金など)の調査も欠かせません。信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3機関)に開示請求することで、クレジット・ローン・消費者金融の借入状況を確認できます。消費者金融からの郵便物・返済明細も見落とさないようにしましょう。
財産目録の作成と次のステップ

財産調査が一段落したら、調査結果を整理して次のステップへ進みます。
財産目録にまとめることで協議がスムーズに
調査結果を「財産目録」にまとめます。財産目録とは、プラスの財産(預貯金・不動産・有価証券・保険など)とマイナスの財産(借入金・未払い税金・連帯保証債務など)を一覧にした書類です。相続人全員が財産の全体像を把握した状態で遺産分割協議に臨むことで、話し合いがスムーズに進みます。
相続放棄を検討する判断基準
財産目録を作成したら、プラスとマイナスの合計を比較します。マイナスの財産がプラスを大幅に上回る場合は、相続放棄を検討します。放棄の申述期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内ですので、この期間中に判断することが重要です。判断が難しい場合は「限定承認」(プラスの財産の範囲内でのみ借金を返済する制度)という選択肢もありますが、手続きが複雑なため専門家に相談することをおすすめします。
行政書士に依頼できること
財産調査のアドバイス・財産目録の作成・遺産分割協議書への財産記載は行政書士の業務です。相続税の計算・申告は税理士、不動産登記は司法書士が担当します。「何から手をつければいいかわからない」という方は、かなで行政書士事務所にお気軽にご相談ください。全体の流れを整理した上で、必要な書類収集から協議書作成まで一括してサポートします。
財産調査で活用できるツールとサービス

近年は、財産調査を効率化するためのツールやサービスも整備されてきました。代表的なものをご紹介します。
- 全国銀行協会の預金等照会サービス:複数銀行を一括照会
- 法務局の登記情報提供サービス:不動産の登記内容をオンライン取得
- 証券保管振替機構(ほふり)の開示請求:証券口座の有無を照会
- 保険会社への契約照会:生命保険契約の有無
これらを組み合わせることで、見落としのない財産調査が可能になります。Kanade行政書士事務所では、財産調査の代行もお受けしています。
全国の不動産を調べるにはどうすればいいですか?
被相続人の住所地・本籍地の市区町村役場で「名寄帳」を取得すると、その市区町村内の不動産を一覧で確認できます。複数の都道府県にまたがる場合は各市区町村に個別に請求するか、法務局の登記情報提供サービスを活用する方法があります。行政書士や司法書士に依頼すると効率的です。
借金があるかどうか調べる方法はありますか?
信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3機関)に開示請求することで、クレジット・ローン・消費者金融の借入状況を確認できます。相続人が代わりに開示請求する手続きがあります。
財産調査はどのくらいの期間かかりますか?
財産の種類・量によって異なりますが、一般的には1〜3ヶ月程度を見込んでください。相続放棄の3ヶ月の期限が迫っている場合は、家庭裁判所に期間延長の申請をすることもできます。

