「代襲相続って、どんな場合に起きるんですか?」「手続きが複雑になるって本当ですか?」――相続のご相談で、よくいただくご質問です。
代襲相続が発生すると、戸籍収集の範囲が広がり、相続人の確定に時間がかかるため、通常の相続よりも実務の負担が大きくなります。本記事では、宇都宮市で相続実務を行う行政書士の立場から、代襲相続が発生したときの手続きの流れと実務上のつまずきポイントを整理してお伝えします。
📚 制度の基本(誰が代襲相続人になるか・直系/傍系の違いなど)は、別記事で詳しく解説しています。
👉 代襲相続とは?孫や甥姪が相続人になる場合をわかりやすく解説
代襲相続の基本(おさらい)

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人となるべき人が「被相続人より先に死亡していた場合」に、その子(孫)が代わりに相続する制度です。
代襲相続が発生する主なケース
- 子がすでに死亡している → 孫が代襲相続人になる
- 兄弟姉妹が死亡している → 甥・姪が代襲相続人になる
※ 父母・祖父母には代襲相続はありません。
代襲が発生する原因
- 被相続人より先に死亡していた
- 相続欠格に該当した
- 相続廃除を受けた
※ 相続放棄は代襲原因にならないことに注意が必要です。
「再代襲」もあり得る
子・孫の系統では、孫が亡くなっていれば、ひ孫まで代襲が続く(再代襲)ことがあります。一方、兄弟姉妹の代襲は1代限りで、甥・姪が亡くなっていてもその子(又甥・又姪)には代襲しません(民法889条2項)。
代襲相続の手続き|5つのステップ

代襲相続は、通常の相続よりも戸籍収集の範囲が広がるため、相続人確定の段階が最重要ポイントとなります。実務での典型的な流れは次のとおりです。
STEP1|被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集
まずは通常の相続と同様、被相続人の「出生から死亡までのすべての戸籍」を収集します。これにより以下が確認できます。
- 子が何名いたのか
- そのうち先に亡くなっている人がいるか
- 認知や養子縁組の有無
STEP2|先に死亡している子の戸籍を収集し、代襲の有無を確認
被相続人より先に死亡している子がいた場合、その子の「出生から死亡までの戸籍」を確認し、配偶者の有無や子(孫)を残しているかを確定します。ここで初めて「代襲相続が発生するかどうか」が判断できます。
STEP3|代襲相続人(孫・甥姪)の戸籍を収集
代襲相続人が孫の場合は、その孫の最新戸籍(現在戸籍)を取得します。再代襲がある場合(甥姪が亡くなっていて、その子も代襲する場合など)は、さらに戸籍の範囲が広がります。
STEP4|相続人の確定・法定相続分の計算
代襲相続では、代襲者は本来の人と同じ相続分を受け継ぐのが特徴です。
例:被相続人の子Aが先に死亡 → Aには子(孫)が2名いる場合
→ Aの法定相続分を、孫2名で均等に分けます。
金融機関や不動産登記の実務では、代襲者の人数による相続割合を正確に示す必要があるため、計算結果を相続関係説明図や法定相続情報一覧図に反映しておきます。
STEP5|遺産分割協議書を作成する
代襲相続人も法定相続人の一員として、遺産分割協議に参加する必要があります。遺産分割協議書には全員の署名・実印・印鑑証明書が必要です。代襲相続人が未成年の場合、特別代理人の選任が必要になることがあります(後述)。
代襲相続で特に注意すべき実務ポイント

実務でよく生じるつまずきポイントをまとめました。
① 戸籍の量が非常に増える
代襲相続は、被相続人 → 子 → 孫まで戸籍をさかのぼるため、通常より戸籍の点数が多くなります。本籍地が転々としていたり、昭和・平成の改製原戸籍が複数あるケースでは、取得に時間がかかります。宇都宮市と県外本籍が混在しているケースは特に要注意です。
② 代襲者が海外在住・疎遠の場合の連絡調整
代襲相続では、孫・甥姪が相続人となるため、「連絡がつかない相続人」問題が想定されます。特に疎遠な兄弟姉妹の子(甥・姪)は連絡が取れにくく、相続手続きが長期化することがあります。
③ 未成年代襲者は「特別代理人選任」が必要になることがある
代襲相続人が未成年で、その親(法定代理人)も同じ相続人だと「利益相反」となり、家庭裁判所での特別代理人選任が必要になります。手続きに数週間〜数か月かかるため、見越したスケジュール管理が大切です。
④ 相続税の基礎控除・税務の影響も変わる
代襲相続によって法定相続人の数が変わると、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)も変わります。特に再代襲が発生するケースなど、相続人数が増減する場合は税理士による試算をおすすめします。
手続きを進める方へ|実務上のアドバイス

栃木県・宇都宮市の相続手続きの現場では、代襲相続があると主に次の作業が必要になります。
- 代襲者の住所確認・本人確認
- 印鑑証明書・署名手配(遠方の場合は郵送調整)
- 未成年者がいる場合の特別代理人手続き
- 金融機関への「代襲相続の説明資料」「法定相続情報一覧図」提出
各機関に提出する資料の整合性をそろえることが、手続きをスムーズに進める鍵です。
代襲相続を踏まえた事前の備え
将来代襲相続が発生する可能性がある場合、次のような備えが役立ちます。
- 遺言書の作成:代襲相続も意識した配分を明記
- 予備的遺言:受遺者が先に亡くなった場合の代替指定を入れる
- 家族信託:複雑な承継を柔軟に設計できる
- 定期的な見直し:相続人の死亡など状況変化に応じて遺言書を更新
まとめ|代襲相続ほど「整理力」が必要

代襲相続は、相続人の範囲が広がり、戸籍の量も増え、遺産分割協議の難度も上がる手続きです。だからこそ、「相続人の確定」と「戸籍整理」がすべての土台になります。
意識したいポイント:
- 戸籍を「被相続人 → 先に亡くなった子 → 代襲相続人」の順に丁寧にたどる
- 連絡が難しい代襲相続人(海外在住・疎遠など)への連絡調整に時間を見込む
- 未成年代襲者がいれば、特別代理人選任の準備を早めに
- 遺言書による事前対策で、代襲発生時の混乱を予防する
代襲相続のケースほど、最初の段階での丁寧な整理が手続きをスムーズに進める鍵となります。Kanade行政書士事務所でも、戸籍収集から遺産分割協議書作成までトータルでサポートしています。

