「遺言執行って何をすること?」「遺言執行者って誰がなれるの?」――遺言書がある相続では、その内容を実際に手続きへ落とし込む「遺言執行」というステップが欠かせません。
この記事では、宇都宮・栃木県内の実務をもとに、遺言執行の基本・遺言執行者の役割と必要なケース・実際の手続きの流れ・よくあるトラブル例まで、わかりやすく解説します。
遺言執行とは?

遺言執行とは、被相続人(亡くなった方)の遺言内容を、実際に実現するための手続きのことです。具体的には次のような作業が含まれます。
- 不動産の名義変更(移転登記)
- 預貯金の解約・払い戻し
- 株式・投資信託の名義変更
- 相続人以外への遺贈手続き
- 遺言書による認知の届出 など
遺言書に書かれた内容を、きちんと実行に移す役割を担うのが「遺言執行者」です。
遺言執行者とは?

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために選ばれた「手続きの代理人」のような存在です。
遺言執行者の主な役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 財産管理 | 遺産を適切に保全・管理する |
| 名義変更手続き | 不動産登記、預金の払戻し、株式移管 など |
| 遺言内容の実現 | 財産分与、特定遺贈、認知の届出 など |
- ✅ 遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、その人が優先して執行を担当します。
- ✅ 指定がない場合でも、必要に応じて家庭裁判所に選任申立てを行うことができます。
- ✅ ひとことで言えば、「遺言書の内容をきちんと実現してくれる人」が遺言執行者です。
遺言執行者が必要となるケース

次のような場合は、特に遺言執行者を指定しておくとスムーズに進みます。
- 遺言書で認知(子の認知)が行われている
- 相続人以外の人に財産を遺贈する内容がある
- 相続人同士の関係が複雑、または対立がある
- 預貯金・不動産・株式など、財産が多岐にわたる
遺言執行者がいることで、相続人同士の直接交渉を減らし、手続きを中立・公正に進めることができます。
実際の遺言執行の流れ(5ステップ)

ステップ1|遺言書の確認・検認(必要な場合)
自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です(法務局保管制度を利用していた場合は不要)。公正証書遺言の場合は検認不要で、すぐに次のステップへ進めます。
ステップ2|遺言執行者の就任
- 遺言書に記載されている場合:その人物が正式に就任
- 記載がない場合:家庭裁判所に申し立てて選任
ステップ3|財産目録の作成と相続人への通知
相続財産をリスト化し、相続人に内容を通知します。これにより、相続人それぞれが対象財産を把握できます。
ステップ4|名義変更・解約など各手続きの実施
銀行口座の解約、証券口座の名義変更、不動産の移転登記など、遺言の内容に従って各種手続きを進めます。
ステップ5|財産の分配・遺贈
相続人や受遺者へ、遺言書のとおりに財産を引き渡して完了します。
遺言執行でよくあるトラブルと注意点
遺言執行は重要な役割ですが、対応を誤ると相続人との間で深刻なトラブルに発展することもあります。実際によくある事例と、その注意点を見てみましょう。
ケース1|遺言執行者が手続きを放置してしまった
事例:遺言執行者に選ばれた相続人や第三者が、「忙しい」「何から手をつけたらいいか分からない」などの理由で、長期間執行を放置してしまった。結果として、他の相続人から責任追及される事態に発展した。
背景
- 遺言執行者は、速やかに適切な管理と執行を行う義務を負っている(民法1012条)
- 放置によって遺産の価値が下がったり、他の相続人に不利益が出た場合、損害賠償責任を問われる可能性がある
✅ 遺言執行者には「遺言内容を忠実かつ迅速に実行する義務」があります。指定する際は、信頼でき、手続きを確実に進められる人や専門家を選ぶことが大切です。
ケース2|遺言執行者が遺言内容と異なる行動をした
事例:遺言書の内容と異なる方法で、勝手に遺産を処分・分配してしまった。後にそれが発覚し、相続人から差し止めや損害賠償請求を受ける事態に。
背景
- 遺言執行者は遺言書の内容に忠実に従う義務がある
- 逸脱した行動は、解任請求や損害賠償の対象になる
✅ 判断に迷うときは、相続人と相談したうえで進める、もしくは専門家のアドバイスを受けるのが安全です。
まとめ

遺言執行は、亡くなった方の最後の意思を「形にする」大切な仕事です。手続きが多岐にわたり、法律上の義務も伴うため、誠実に・迅速に・正確に進めることが求められます。
スムーズに進めるためのポイント:
- 遺言書に遺言執行者を指定しておく(事前に本人の同意を得る)
- 相続人が複雑なケースや財産が多岐にわたる場合は、専門家を執行者に検討する
- 就任後は速やかに財産目録を作成し、相続人に通知する
Kanade行政書士事務所でも、遺言執行者としての就任や、遺言執行のサポートを承っています。
👉 次回:相続手続きの流れとタイミングを徹底解説|宇都宮市【vol.9】
📚 シリーズ目次:相続手続き解説シリーズまとめページ
よくある質問
遺言執行者は必ず選任しなければなりませんか?
必須ではありませんが、遺言の内容によっては(認知・相続人の廃除など)遺言執行者が法律上必要になるケースがあります。また、執行者がいると手続きがスムーズに進むため、遺言書作成時に指定しておくことをおすすめします。
遺言執行者になれるのはどんな人ですか?
未成年者・破産者以外であれば誰でもなれます。相続人自身がなることもできますが、利害関係が生じる場合があります。行政書士・弁護士・司法書士などの専門家に依頼すると手続きが円滑に進みます。
遺言執行者がいる場合、相続人が勝手に財産を処分することはできますか?
できません。遺言執行者がいる場合、相続人が遺言の内容に反して財産を処分しても、その行為は原則として無効になります。遺言の確実な実現を守るための制度です。

