「銀行口座とどう違うの?」「名義変更ってどうするの?」「注意点は?」――証券口座や株式の相続手続きには、銀行口座とは異なる独特のルールがあります。
この記事では、宇都宮・栃木県内での実務経験をもとに、証券口座・株式の相続手続きの流れと、判断に迷いやすいポイント(名義変更か売却か、上場か非上場か、複数口座への対応など)をわかりやすく整理します。
銀行口座と証券口座の相続はどう違う?

相続手続きというと、まず銀行口座を思い浮かべる方が多いですが、証券口座(株式・投資信託など)にも別途相続手続きが必要です。銀行とは違い、「単なる解約」ではなく「名義変更(移管)」が手続きの中心になるのが特徴です。
| 銀行口座 | 証券口座 | |
|---|---|---|
| 手続きの中心 | 解約・払戻し | 名義変更・移管 |
| 必要書類 | 戸籍・協議書 等 | 戸籍・協議書 等+証券特有の書類 |
| 所要期間 | 2週間〜1か月程度 | 数週間〜1か月程度 |
| 主な留意点 | 誰が払戻しを受けるか | 名義変更後に売却するか保有するか |
名義変更後は、相続人自身の判断で「売却・換金」または「現物のまま保有」を選択する流れになります。どちらにするかは、相続人同士の協議内容や遺産分割協議書の取り決めによって決まります。
証券口座の相続手続き|全体の流れ

ステップ1|証券会社へ死亡の連絡
まず該当の証券会社に被相続人の死亡を伝え、相続手続きを開始します。連絡を受けた時点で口座は凍結され、以後の取引は停止します。
ステップ2|相続手続き書類の取り寄せと確認
証券会社から、相続手続き用の書類一式が郵送されます。一般的に必要となるのは次の書類です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式(または法定相続情報一覧図)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書(発行3か月以内が一般的)
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 証券会社所定の相続手続依頼書
- 相続人の本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど)
✅ 遺産分割協議書には、「株式や投資信託を誰が引き継ぐか」を明記しておく必要があります。
🔗 遺産分割協議書とは?必要な内容と作成のポイント
ステップ3|書類提出
準備した書類を証券会社に提出します。不備があると差し戻しになるため、印鑑証明書の有効期限や協議書の記載内容を必ず事前確認しておきましょう。
ステップ4|手続き完了
書類確認が終われば、株式や投資信託は相続人の証券口座に移管されます。書類提出から完了まで、通常数週間〜1か月程度かかります。
名義変更と売却、どちらを選ぶ?
証券口座の相続では、「名義変更」「売却」、または「両方」を選択することになります。
名義変更(移管)
故人の口座から相続人の証券口座へ、株式や投資信託をそのまま移し替える方法です。相続人は、引き継いだ後も保有・運用・売却を自由に行えます。
▶ 注意点:相続人が証券口座を持っていない場合は、新たに口座を開設する必要があります。
売却・換金
資産を相続人名義に移管した後、相続人自身が売却して現金化する方法です。売却後の現金を遺産分割協議に沿って分配します。
▶ 分割方法の例
- 代表相続人が一括で受け取り、売却後に現金で分ける
- 銘柄ごとに分けて、それぞれの相続人が現物を受け取る
なお、売却には相続人全員の同意が必要となるケースが多いため、遺産分割協議書での合意内容が重要です。
上場株式と非上場株式の違い

- 上場株式:通常、証券会社が名義変更や売却手続きを一括で行います。
- 非上場株式:発行会社ごとに手続きが異なり、直接発行会社に確認が必要です。信託銀行が管理を任されている場合は、信託銀行とのやり取りになります。手続きに時間がかかる傾向があるため、早めの対応が大切です。
栃木県内でよくある実例
栃木県では、地銀系証券・大手証券のいずれも利用者が多く、近年はネット証券を併用される方も増えています。宇都宮エリアでは次のような証券会社が多く見られます。
- 野村證券 宇都宮支店
- 大和証券 宇都宮支店
- SMBC日興証券 宇都宮支店
- 地元地銀系列の証券子会社
複数の証券会社・銀行を利用されている場合は、それぞれで個別に相続手続きが必要になります。会社により「戸籍一式の必要範囲」や「協議書の細かい指示内容」が若干異なるため、事前確認を丁寧に行うことが大切です。
証券口座の相続でよくあるトラブル事例
ケース1|株式が複数の証券口座に分散していた
事例:被相続人が複数の証券会社に口座を持っていたため、各証券会社ごとに個別に相続手続きが必要となり、書類の準備・やり取りに大きな手間と時間がかかった。
ポイント
- 証券会社ごとに求められる書類や流れが異なるため、統一的に進めるのが難しい
- 書類の有効期限(印鑑証明書3か月以内など)にも注意が必要
✅ 早めに被相続人の証券口座をリストアップし、必要に応じて各証券会社へ同時並行で進めましょう。法定相続情報一覧図を法務局で複数枚取得しておくと、各社並行手続きがスムーズになります。
ケース2|「名義変更したい」「売却したい」で協議が難航
事例:相続人の一部が「すぐに売却して現金化したい」と希望し、他の相続人が「株式をそのまま保有したい」と主張して、遺産分割協議が長引いた。
ポイント
- 株式は現物資産のため、処分方法(売却か保有か)で意見が分かれやすい
- 取引停止期間が長引くと、株価変動リスクも生じる
✅ 遺産分割協議書に「株式を売却して現金化し分配する」など、方針を明記しておくと、その後の手続きが格段にスムーズになります。遺言書がある場合も、株式の取扱いまで具体的に書かれているか必ず確認しましょう。
ケース3|「少額だから」と放置してしまった
事例:資産額が小さいために相続手続きを先送りにしていたところ、数年後に証券会社の規定変更や口座管理体制の見直しにより、手続きが煩雑になったり、休眠口座扱いになってしまった。
ポイント
- 休眠口座扱いになると、追加手続きが必要となる場合がある
- 口座維持手数料が継続発生し、かえって負担になることもある
✅ たとえ少額でも、相続手続き対象の資産としてきちんと扱い、早めに片付けるのが安心です。近年は、未利用期間が一定を超えると自動的に管理口座扱いとなる証券会社も増えています。
トラブルを防ぐためのポイント
証券口座の相続をスムーズに進める鍵は、「遺産分割の合意形成」と「証券会社との正確なやり取り」の2つです。次の3点を意識するだけでも、手続きの負担や将来のトラブルリスクを大きく減らせます。
- 早めに証券口座のリストアップを行う
- 遺産分割協議書に、具体的な資産の扱い(誰が・何を・売却か保有か)を明記する
- 少額資産でも放置せず、早期に対応する
まとめ

証券口座・株式の相続は、銀行口座よりも手続きがやや煩雑ですが、早めに把握し、丁寧に準備を整えればスムーズに進められます。とくに「名義変更か売却か」「複数口座への対応」「上場か非上場か」の3点は、相続人間で意見が分かれやすいので、協議書の段階で具体的に決めておくと安心です。
Kanade行政書士事務所でも、証券口座・株式の相続手続きに関するご相談を承っています。
👉 次回:財産目録の作り方と預貯金・株式・自動車の名義変更|宇都宮市【相続手続き解説vol.6】
📚 シリーズ目次:相続手続き解説シリーズまとめページ
よくある質問
証券口座の相続手続きで最初にすることは何ですか?
まず証券会社に相続が発生したことを連絡します。口座が凍結され、以降の取引ができなくなります。その後、証券会社所定の相続手続き書類を取り寄せ、戸籍や遺産分割協議書と合わせて提出します。
故人の株式は売却しないと相続できませんか?
売却せずに現物のまま相続することも可能です。相続人が証券口座を持っている場合は移管できます。口座がない場合は新規開設が必要です。なお相続財産の評価は相続時の株価で行われます。
ネット証券の相続手続きはどうすればよいですか?
ネット証券も手続きの流れは対面の証券会社と同様ですが、書類の取り寄せや提出がオンライン・郵送になります。各社専用の相続サポートデスクに問い合わせるところから始めましょう。

