相続手続きを進めるうえで、まず必ず行わなければならないのが「誰が相続人なのか」を確定させる作業です。これを「相続人調査」といい、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて収集して確認します。
戸籍の収集は複数の市区町村をまたぐことも多く、慣れていないと時間がかかります。この記事では、相続人調査・戸籍収集の基本的な流れを解説します。
なぜ戸籍収集が必要なのか

金融機関・法務局・役所など、相続に関わるすべての機関が「法定相続人が誰であるか」を戸籍で確認します。遺言書がある場合も、相続人の確定のために戸籍が必要です。
また、認知した子・養子・前婚の子など、知らなかった相続人が戸籍から発覚するケースもあります。相続開始後は早めに戸籍収集を始めることが重要です。
収集が必要な戸籍の種類

| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 現在の戸籍謄本 | 現在の戸籍の全記録 |
| 改製原戸籍(かいせいはらこせき) | 戸籍制度の改製前の古い戸籍 |
| 除籍謄本(じょせきとうほん) | 全員が除籍された戸籍 |
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍がすべて必要です。本籍地を複数回変更している場合、複数の市区町村から取り寄せることになります。
戸籍収集にかかる費用の目安
| 書類 | 1通あたり |
|---|---|
| 戸籍謄本(現在) | 450円 |
| 除籍謄本・改製原戸籍 | 750円 |
| 住民票の除票 | 300円程度 |
被相続人の転籍回数や家族構成によって通数は変わりますが、10〜20通程度になることもあります。
続柄別・必要な戸籍の違い
相続人の続柄によって、収集する戸籍の範囲が変わります。
| 相続人の続柄 | 必要な戸籍 |
|---|---|
| 配偶者・子 | 被相続人の出生〜死亡の全戸籍/相続人全員の現在の戸籍 |
| 父母(第2順位) | 上記に加え、子全員の相続放棄申述受理通知書 |
| 兄弟姉妹(第3順位) | 被相続人の両親の出生〜死亡の戸籍/兄弟姉妹の現在の戸籍 |
| 代襲相続人(孫・甥姪) | 代襲原因(親の死亡等)を示す戸籍も追加 |
兄弟姉妹が相続人になるケースは収集範囲が広くなりがちです。被相続人の両親の出生から死亡までさかのぼる必要があるため、明治・大正時代の古い戸籍が必要になることもあります。
相続人調査の流れ

- 被相続人の死亡時の戸籍(除籍謄本)を取得(最後の本籍地の市区町村役場)
- 出生まで戸籍をさかのぼる(転籍・婚姻などで変わるたびに前の本籍地の役場へ請求)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本を取得
- 相続関係説明図を作成(誰が相続人かを図式化したもの)
戸籍謄本の広域交付制度(2024年3月〜)

2024年3月1日から、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村窓口で戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得できる「広域交付制度」が始まりました。相続に必要な戸籍をまとめて1か所で取得できるため、複数の役所を回る手間が大幅に省けます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得できる書類 | 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本(全部事項証明書) |
| 取得できない書類 | 戸籍抄本・一部事項証明書・個人事項証明書 |
| 請求できる方 | 本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫) |
| 必要なもの | マイナンバーカード(顔認証または暗証番号) |
| 請求方法 | 窓口のみ(郵送・代理人請求は不可) |
| 費用 | 通常の交付手数料と同じ(戸籍謄本450円・除籍謄本等750円) |
⚠️ 注意点:コンピュータ化されていない一部の古い戸籍(手書きの戸籍など)は広域交付の対象外となる場合があります。その場合は本籍地の役場に直接請求が必要です。また、行政書士など代理人による広域交付請求はできません。
戸籍請求の方法(広域交付以外)
広域交付の対象外となる戸籍は、市区町村窓口へ直接請求するほか、郵送での請求も可能です。遠方の市区町村の戸籍は郵送で取り寄せるのが一般的です。
| 請求方法 | 必要なもの |
|---|---|
| 窓口請求 | 申請書・本人確認書類・手数料(現金) |
| 郵送請求 | 申請書・本人確認書類のコピー・定額小為替・返信用封筒 |
法定相続情報証明制度の活用
法務局に戸籍一式を提出すると、相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図」の写しを発行してもらえます。この写しがあれば、各種手続きで戸籍謄本一式の原本を何度も提出する手間を省けます。
- 申出先:被相続人の本籍地・最後の住所地・相続人の住所地などを管轄する法務局
- 費用:無料(戸籍取得の実費は別途)
- 有効期限:発行から5年間
相続関係説明図とは
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を図式化した書類です。法務局への登記申請や金融機関の手続きで戸籍謄本の原本を返してもらうために使います(原本還付)。
記載する主な内容は以下のとおりです。
- 被相続人の氏名・生年月日・死亡年月日・最後の住所・本籍
- 相続人全員の氏名・生年月日・続柄・住所
- 相続放棄した相続人がいる場合はその旨の記載
決まった書式はありませんが、法務局のウェブサイトに参考書式が公開されています。戸籍の内容を正確に読み解いて作成する必要があるため、不慣れな方は行政書士への依頼も選択肢のひとつです。
数次相続が発生しているケース
相続手続きが完了しないうちに、相続人(例:配偶者)も亡くなってしまった場合を「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。1回目の相続と2回目の相続が重なり、相続人・必要書類・手続きが複雑になります。
- 1回目と2回目、両方の相続について戸籍収集が必要
- 遺産分割協議も2回分まとめて行うことがある
- 法定相続情報一覧図も数次相続に対応した形式で作成
数次相続が絡む案件は、早めに専門家に相談することをおすすめします。不動産登記が伴う場合は司法書士、書類収集・相続関係説明図の作成は行政書士の業務範囲です。
専門家のサポート範囲
戸籍収集・相続関係説明図の作成・法定相続情報一覧図の申出は行政書士が代行できる業務です。複数の市区町村にまたがる収集作業や、古い戸籍の読み解きなど、煩雑な作業を任せることができます。
📌 不動産の相続登記は司法書士、相続税申告は税理士の業務範囲です。手続き内容に応じた専門家と連携してご対応します。
まとめ

相続人調査と戸籍収集の進め方を整理すると、次のようになります。
- 金融機関・法務局・役所すべてで戸籍による相続人確認が必要
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集する
- 続柄により範囲が変わる(兄弟姉妹は両親の戸籍までさかのぼる)
- 2024年3月開始の広域交付制度で最寄り窓口での取得が可能に
- 法定相続情報一覧図を取得すると以後の手続きが楽になる
戸籍収集は相続手続きの土台です。「最初の一歩がわからない」という段階でもお気軽にご相談ください。
よくある質問
戸籍収集はどのくらいの時間がかかりますか?
窓口請求は即日〜数日、郵送請求は1〜2週間程度かかります。複数の市区町村をまたぐ場合は1通ずつ順番に請求する必要があり、全体で1〜2か月かかることもあります。2024年3月開始の広域交付制度を活用すれば、最寄り窓口でまとめて取得できる場合があります。
相続人に行方不明者がいる場合はどうすればよいですか?
行方不明者がいる場合、遺産分割協議を進めるためには家庭裁判所への申立て(不在者財産管理人の選任、または7年以上行方不明の場合は失踪宣告)が必要になることがあります。こうした申立ては司法書士または弁護士にご相談ください。
法定相続情報証明制度は誰でも申出できますか?
相続人(または委任を受けた行政書士・司法書士など)が申出できます。戸籍一式と相続関係説明図を法務局に提出することで、無料で法定相続情報一覧図の写しを取得できます。各種手続きで戸籍の束を何度も提出する手間が省けるため活用がおすすめです。

