「相続が始まったら、まず何をすればいい?」――その答えは、「誰が相続人かを正確に把握すること」です。これが曖昧なままでは、遺産分割協議も銀行手続きも、不動産の名義変更も先に進めません。
この記事では、宇都宮・栃木県内の実務をもとに、相続人調査の進め方・戸籍収集の手順・2024年から始まった広域交付制度の活用・つまずきやすいポイントまで、わかりやすく整理します。
相続は「相続人を調べること」から始まります

相続人を正確に確定するためには、被相続人(亡くなった方)の戸籍を遡って収集する必要があります。これを一般的に「戸籍の収集」または「相続人調査」と呼びます。
この調査が曖昧なままでは、その後のどの手続きも止まってしまいます。最初にしっかり時間をかける価値があるステップです。
戸籍で相続人を確認する基本ステップ

ステップ1|「死亡の記載がある戸籍」を確認する
まずは市区町村役場で、被相続人の最新の戸籍(除籍)を取得します。そこに「〇年〇月死亡」と記載されています。これを起点に、過去の戸籍を遡っていきます。
ステップ2|出生から死亡までの連続した戸籍を集める
相続人調査では、出生から死亡までの「戸籍のつながり」がすべて必要です。転籍・結婚・離婚などのタイミングで戸籍が変わるため、1人につき3〜5通以上の戸籍を取り寄せることもよくあります。
2024年スタート|「戸籍の広域交付制度」
2024年3月1日から、戸籍の取得が大きく便利になりました。「戸籍の広域交付制度」により、一つの役所で出生から死亡までの戸籍をまとめて取得できるようになっています。
主な特徴
- 本籍地が遠方でも、現在地近くの役所で取得できる
- 複数の本籍がある場合も、1か所でまとめて請求可能
- 利用できるのは「本人・配偶者・直系尊属・直系卑属」のみに限定
- 郵送請求・代理人の利用はできず、本人が窓口に出向く必要あり
特に高齢の方や遠方の親族にとっては、手続きの大きな負担軽減につながる制度です。
🔗 相続人を図にまとめたい方はこちらも:相続関係説明図・法定相続情報一覧図の使い分けと作り方|宇都宮市【vol.2】
戸籍収集でよくある注意点

戸籍は「引っ越し」「結婚」で分断される
戸籍は、本籍地の移動(転籍)や婚姻による戸籍の編成によって、新たに作り直される仕組みです。一人の人生でも、複数の市区町村にまたがって戸籍が存在することは珍しくありません。
たとえば次のような節目で、新しい戸籍が編成されています。
- 結婚して、夫の本籍地へ転籍した
- 引っ越しに合わせて本籍も変更した
- 一度離婚して旧姓に戻ったあと、再婚した
「つながりが切れている」戸籍とは
相続人調査では、出生から死亡まで戸籍が一つの流れで確認できることが前提です。次のような場合は、戸籍の連続性が途切れることがあります。
- 転籍の履歴が漏れていた
- 婚姻・離婚歴が抜けていた
- 古い戸籍がすでに廃棄・改製されている
この状態になると戸籍の調査がストップし、相続人の確定ができず、手続きが前に進まなくなってしまいます。
解決には「経験と地道な調査」が必要
戸籍がつながらないケースでは、戸籍の読み解き方や古い戸籍の取得ルートを熟知している専門家に依頼するのが安心です。具体的には次のような対応が必要になります。
- 改製原戸籍・除籍謄本の請求先を正確に判断する
- 推定される転籍先から戸籍をたどる
- 時代ごとの表記ルール(旧漢字や略字)を読み解く
慣れていないと時間も費用もかかってしまうため、つながりが切れているケースでは早めに専門家への相談を検討しましょう。
戸籍をたどると「知らない相続人」が見つかることも
相続では、思わぬ事実が戸籍に記されていることがあります。よくあるのが次のようなケースです。
- 被相続人に前婚の子(先妻・先夫の子)がいた
- 認知した子がいた
- 養子縁組をしていた/離縁していた
これらの情報は、戸籍を遡って初めて判明することが多く、家族でも知らなかったケースは少なくありません。
読み解きにはコツがいる
古い戸籍は、現在の様式と違って手書きで記載されており、旧字体や略字が使われていることもあります。専門家でも読み解きに時間がかかることがあるため、自力での調査は思った以上に時間がかかる作業です。
判明した相続人は遺産分割協議に必ず参加する必要がある
戸籍調査で新たに判明した相続人も、当然ながら法定相続人です。その方を含めずに行った遺産分割協議は無効になるため、見落としは絶対に避けたいポイントです。
戸籍収集から「相続関係説明図」「法定相続情報一覧図」へ
戸籍を集めたら、その情報を見やすく整理する書類が必要になります。
- 相続関係説明図:相続人の関係を樹形図で示した書類(任意様式)
- 法定相続情報一覧図:法務局で認証を受けた、戸籍一式の代わりになる公的な書類
特に法定相続情報一覧図を取得しておくと、銀行・証券会社・法務局などで「戸籍一式」の提出が省略でき、複数の手続きを並行して進めやすくなります。
まとめ

相続人の調査は、すべての相続手続きの土台です。この部分が正確でなければ、遺産分割協議も銀行手続きも不動産の名義変更も進められません。
戸籍は慣れていないと難しく感じるかもしれませんが、次のポイントを押さえれば落ち着いて進められます。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍を、漏れなく集める
- 2024年からの「広域交付制度」を活用すれば、一つの窓口でまとめて取得できる
- 転籍・婚姻歴があるとつながりが切れやすいので注意する
- 知らない相続人が見つかることもあるため、調査は丁寧に行う
Kanade行政書士事務所でも、戸籍調査からのトータルサポートを承っています。
👉 次回:相続関係説明図・法定相続情報一覧図の使い分けと作り方|宇都宮市【vol.2】
📚 シリーズ目次:相続手続き解説シリーズまとめページ
よくある質問
相続人の調査は、どこまでさかのぼれば良いですか?
被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍一式(出生〜死亡)を収集します。結婚・離婚・転籍などで複数の戸籍にまたがることが多く、複数の役所へ請求が必要になる場合があります。
戸籍の収集は自分でできますか?
ご本人または直系の親族であれば取得できます。「戸籍の広域交付制度」を利用すると、一つの市区町村の窓口で出生から死亡までの戸籍をまとめて取得できるため便利です。
戸籍を調べて初めて「知らない相続人」が見つかることはありますか?
あります。被相続人に前婚の子や認知した子がいる場合、戸籍調査で初めて判明することがあります。その場合もその方は法定相続人となるため、遺産分割協議には必ず全員が参加する必要があります。

