内縁の相手に遺したい|法定相続人でないパートナーを守るための遺言書の工夫
長年、生活を共にしてきた内縁のパートナー。
籍は入れていなくても、気持ちは夫婦そのもの。
けれど、自分に万一のことがあったとき、「法律上の夫婦」でないことが大きな壁となることがあります。
この記事では、法定相続人でない内縁のパートナーに、大切な財産や想いを残すための遺言書の工夫と注意点について、行政書士の視点からわかりやすくお伝えします。
内縁のパートナーとは?法的な位置づけと限界

「事実婚」と「法律婚」の違い
内縁関係、いわゆる事実婚は、婚姻届を提出していないものの、社会的には夫婦と認められている関係です。
住民票上では「未届の配偶者」と記載されることもあります。
しかし、法律的には「配偶者」としての地位は認められず、相続権も発生しません。
つまり、内縁のパートナーは、どれだけ長く連れ添っても、自動的に財産を相続することはできないのです。
遺言書がなければどうなる?内縁関係の相続の現実

たとえば、内縁の夫が亡くなったとき、相続財産(不動産や預貯金など)は、子どもや親、兄弟姉妹といった法定相続人に全て渡ります。
その結果、残された内縁の妻が住んでいた家を出ざるを得なかったり、葬儀費用の支払いにも支障が出ることが少なくありません。
感情的な対立に発展してしまうこともあり、現実には「相続争いに巻き込まれたくないから何も言えない」というケースも多く見受けられます。
こんなご相談がありました(実例紹介)
【事例】内縁の妻に自宅を残したい
70代男性。30年連れ添ったパートナーと婚姻届を出していなかったが、死後も彼女が安心して暮らせるようにしたいとご相談がありました。
ご本人は自筆で遺言を書くつもりでしたが、内容の不備を懸念し、最終的には公正証書遺言をご提案。無事にご希望どおりの内容を反映できました。
【事例】子どもがいない男性と内縁の妻
法定相続人は兄弟姉妹。パートナーは家も預金も受け取れない状況。
遺言でパートナーに全財産を遺贈するとともに、遺言執行者を専門家に指定し、円滑な相続を実現しました。
遺言書で「遺贈」することで守れる
では、どうすればパートナーを守れるのでしょうか。
その答えの一つが「遺言書」です。
遺言書に「◯◯に財産のうち〇〇を遺贈する」と記載しておくことで、内縁の相手にも財産を遺すことができます。
ここでポイントとなるのが、法定相続ではなく「遺贈」という形を取ることです。
遺贈とは、相続人以外の第三者に財産を残す方法で、内縁の相手にも確実に想いを届けることができます。
公正証書遺言がおすすめです

自筆証書遺言は、書式や内容の不備により無効になることもあります。
大切な人に確実に財産を残したいのであれば、「公正証書遺言」をおすすめします。
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法的な不備がなく、安全性が高い
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遺言書が公証役場に保管されるため、紛失の心配がない
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専門家の関与により、より確実な文案を作成できる
遺言に書いておきたい3つのこと

内縁のパートナーを守る遺言書では、以下の3点を意識しておくことが大切です。
1. 明確な財産の指定
曖昧な表現だと、他の相続人とトラブルになることもあります。
「自宅の土地建物を◯◯(内縁の妻)に遺贈する」「預貯金のうち○○銀行の口座残高全額を渡す」など、できるだけ具体的に記載します。
2. 遺言執行者の指定
遺言の内容を実現するためには「遺言執行者」の存在が重要です。
信頼できる第三者や専門家を指定しておくと、手続きが円滑になります。
3. 付言事項で気持ちを伝える
「私にとって◯◯は人生の伴侶であり、深い絆で結ばれた存在でした」
「遺贈は感謝の証です。どうかご理解いただけますようお願いいたします」
こうした言葉を添えることで、他の相続人の理解を得やすくなります。
遺留分への配慮
子や配偶者など法定相続人がいる場合、内縁のパートナーに全財産を遺贈しても、遺留分を侵害される可能性があります。遺留分侵害額請求をされた場合、パートナーは侵害された分を金銭で支払う必要があります。
遺留分への配慮として、次のような工夫があります。
- 法定相続人にも一定の財産を残す内容にする
- 生命保険を活用して相続人に現金を届け、パートナーには不動産を残す
- 付言事項で配分の理由を丁寧に説明する
内縁関係を証明する書類の準備
いざ相続が発生したとき、パートナーが内縁関係であったことを証明できる書類があると手続きがスムーズです。次のような書類を日頃から準備しておきましょう。
- 住民票:同一世帯・同一住所で登録
- 賃貸契約書:同居を示す書類
- 公共料金の契約:パートナーが支払いを担っている証拠
- 医療関係の書類:緊急連絡先に登録
- 葬儀・供養の約束:遺志として書面化
まとめ|遺言で「法律に守られない関係」を守る

内縁のパートナーには法定相続権がありません。
けれども、「遺言書」という手段を使えば、その関係を法律的に補い、大切な人に安心を届けることができます。
「残す側の想い」と「受け取る側の安心」を両立させるためにも、できるだけ早めの準備をおすすめします。
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よくある質問
遺贈された側に税金はかかりますか?
相続税の対象になります(贈与税ではありません)。遺贈は、遺言により亡くなった方から財産を受け取る行為で、相続税法上「相続」と同じ扱いになります。ただし、法定相続人以外の方(内縁のパートナーなど)が遺贈を受ける場合、通常の相続税額に2割加算されます。金額が大きくなる場合は、事前に税理士へご相談されることをおすすめします。
遺言を書いても遺留分で争われませんか?
子や兄弟姉妹がいる場合は、遺留分(最低限の相続分)に注意が必要です。相続人の構成に応じて配慮しましょう。
パートナーが高齢・認知症の場合は?
受け取る側の事情によっては、信託や後見制度の検討も必要です。個別の事情に応じた設計が重要になります。

