相続手続きのご相談で、「相続放棄は市役所に行けばいいのですか?」「亡くなった人の住所地ですか?相続人の住所地ですか?」といったご質問をよくいただきます。
相続放棄は、申述先を間違えると受理されない重要な手続きです。さらに、相続開始を知った日から3か月以内という厳格な期限もあります。この記事では、相続放棄の正しい申述先と、実務で混同しやすいポイントをわかりやすく解説します。
相続放棄の申述先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」

相続放棄は、家庭裁判所に申述する裁判手続きです。提出先は次の基準で決まります。
👉 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
相続人自身の住所地ではありませんので注意が必要です。
「被相続人の住所地」が基準になる理由

相続放棄は、相続財産の管理や他の相続人との関係整理と深く関係するため、相続が開始した場所=被相続人の住所地を基準に管轄が定められています。
そのため、相続人が全国に散らばっていても・遠方や海外に住んでいても、申述先の家庭裁判所は一か所に決まります。
相続放棄の申述ができる人

相続放棄の申述ができるのは、被相続人の法定相続人本人です。具体的には次の方が該当します。
- 配偶者
- 子(代襲相続人を含む)
- 直系尊属(父母・祖父母)
- 兄弟姉妹(代襲相続人を含む)
未成年者や判断能力に制限がある相続人については、親権者・特別代理人、または成年後見人が代理して申述します。
また、相続放棄は相続人ごとに個別に行う手続きであり、代表者がまとめて申述することはできません。
よくある間違い

実務で特に多い誤解を整理します。
- ❌ 相続人の住所地の家庭裁判所に申述する → 受理されません
- ❌ 市役所・役場に届け出る → 相続放棄は裁判所の手続きです
- ❌ 法務局に提出する → 相続登記とは別の制度です
- ❌ 相続人代表が全員分まとめて申述する → 個別の申述が必要です
管轄の家庭裁判所をどう調べるか
宇都宮市・栃木県の場合は、以下が基本的な管轄となります。
- 宇都宮家庭裁判所本庁:宇都宮市・さくら市・高根沢町など
- 真岡支部:真岡市・益子町など
- 栃木支部:栃木市・小山市など
- 大田原支部:大田原市・那須町など
- 足利支部:足利市・佐野市など
管轄が分からない場合は、裁判所ウェブサイトの「管轄区域」ページで市区町村名を入力すると調べられます。間違った家庭裁判所に申述書を出しても受理されないため、必ず確認してから提出しましょう。
申述に必要な書類
相続放棄申述書は、家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。基本的な必要書類は次のとおりです。
- 相続放棄申述書(申述人の情報・続柄・放棄の理由・相続財産の概略を記入)
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
- 被相続人との関係を証明する戸籍(関係に応じて追加書類)
- 収入印紙800円・連絡用郵便切手
書類に不備があると差し戻されるため、事前に裁判所の確認リストで点検しましょう。
手続き期間と照会書への対応
申述書を提出すると、通常2〜4週間後に家庭裁判所から「照会書(回答書)」が届きます。相続開始を知った時期・相続財産の状況・放棄の意思などを確認する質問票です。回答に不備があると受理されない場合があるため、丁寧に記入して返送します。
照会書の返送後、問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。これで手続きは完了です。銀行や債権者に提出する「相続放棄申述受理証明書」は、別途家庭裁判所に申請すれば発行してもらえます(1通150円程度)。
申述期限(3か月ルール)にも要注意
相続放棄には期限があります。相続開始を知った日から3か月以内。この期間を「熟慮期間」といいます。
管轄の家庭裁判所を調べている間に期限を過ぎてしまうケースも少なくありません。判断に迷う場合は、「熟慮期間の延長申立て」を行うことで時間を確保することも可能です。
相続人が複数いる場合の注意点
相続人が複数いる場合でも、申述先の家庭裁判所は全員共通です。ただし、申述書は相続人ごとに作成・提出します。
- ✔ 他の相続人の分を代理でまとめて申述することはできません
- ✔ それぞれが期限内に手続きを行う必要があります
- ✔ 自分が放棄すると次順位の相続人(両親・兄弟姉妹)が新たに相続人になるため、連絡しておくのがマナーです
専門家のサポート範囲
📌 相続放棄の申述書作成・提出代理は弁護士・司法書士の業務範囲です。行政書士としては、財産調査・相続人関係の整理(戸籍収集・相続関係説明図)まで対応し、必要に応じて連携先の専門家をご紹介します。
当事務所では、戸籍の一括取得から遺産分割協議書の作成、金融機関での解約手続きの代行までワンストップで対応しています。相続放棄が必要な場合は、提携司法書士と連携して進めます。
まとめ

相続放棄の申述先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
意識したいポイント:
- 相続人の住所地ではない点に注意
- 申述できるのは法定相続人本人(または代理人)
- 相続人ごとに個別に申述が必要
- 3か月の期限管理が非常に重要
- 市役所・法務局では受理されない
相続放棄は、「どこに申述するか」「誰が申述できるか」「いつまでに行うか」――この3点を正しく押さえることが、手続きを円滑に進めるポイントです。迷われた段階でのご相談もお気軽にどうぞ。
よくある質問
相続放棄の手続きはどこで行いますか?
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申述書・被相続人の戸籍謄本・申述人の戸籍謄本・収入印紙800円・連絡用郵便切手が必要です。相続人の住所地ではないので注意しましょう。
相続放棄の期限(3か月)を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
原則として承認したとみなされます。ただし「相続財産がないと信じていた相当の理由がある場合」など特別な事情があれば、期限後でも放棄が認められることがあります。家庭裁判所の個別判断となるため、専門家への相談をおすすめします。
相続放棄をすると他の相続人に連絡は必要ですか?
法律上の義務はありませんが、他の相続人の相続分が増えるため、知らせることがマナーとされています。特に次順位の相続人(両親・兄弟姉妹)が新たに相続人になる場合は、連絡しておかないと相手が突然相続人となり、トラブルになる可能性があります。

